実際にうちの猫が開口呼吸をして病院に行ったお話です。
犬のように舌を出して呼吸している姿はかわいらしく感じるものですが、思ったよりもずっと危険なことでした。
あれはOK氏がわが家にやってきて2週間ほど経ったときのこと・・・。新しい環境に警戒しまくりだったOK氏もサークルから出て部屋を探索するようになり、少しずつわが家での生活に慣れてきた時期。
それまでも、オーソドックスな猫じゃらしで少し遊んだりはしていたのだが、OK氏は家に慣れるまではあまり体調がすぐれず、まだとてもじゃないけど遊ぶ気持ちにはなれないようであった。本格的に遊ぶようになってからは、OK氏は目をらんらんと輝かせておもちゃにじゃれはじめた。
すると”子猫は遊びすぎると口を開けて呼吸をすることがある”や”運動しすぎると口を開けて呼吸する”といったことが書いてあった。記事を読む限りそこまで深刻な感じの印象を受けなかったので、とりあえず遊びすぎただけなんだなと思い、その日はOK氏も5分以内にまた元通り口を閉じて呼吸するようになったこともあり、問題ないだろうと思った。
しかし、次の日も、また次の日も遊んでいるとOK氏は口を開けて呼吸をした。そして数日たったある日の夜に、OK氏は変な音(ブーブーのようなグーグーのような音)をたてながら咳のようなものをするようになった。時間にして2、3分の間だろうか、その日は治まったが、さすがにこれはおかしいのではないかと思い、次の日に動物病院に行くことにした。
初めての動物病院である。OK氏が家に来てから3週間ほど経っていた。インターネット検索をして評判の良い、なるべく家から歩いて行けるような場所にある病院を選んだ。
獣医師に、OK氏が遊んだときに口を開けて呼吸すること、昨日咳のようなものをしていたことを伝えると、「それはちょっと気になりますね」と顔がこわばった。こちらとしては、「ああ、はしゃぎすぎたんでしょうね」的な返事を期待していたのだが、それとは真逆な獣医師とのやりとりで、猫の開口呼吸が危険だということをこの時にやっと意識した。
遊んでいる姿がかわいくて録画した動画に開口呼吸をしている姿が映っているものがあったので、それを獣医師に見てもらうと、「ああ、これは開口呼吸ですね。原因を調べたいので少し検査をしましょう」とのことで、レントゲン、超音波検査、血液検査をしてもらうことにした。
そしてその結果はというと、どうやらOK氏は深く呼吸が出来ていないようであった。レントゲンを見ると、あまり空気を吸えていない状態だということがわかるそうで、正常な猫の肺のレントゲン写真と比べながら説明してもらった。
特に病気などが見つからないのであれば、心肺機能の低さはは生まれつきの可能性が高く、この場合はあまり回復したという例は聞かないという。とりあえず激しい運動は避けるように言われ、あんなに楽しそうに遊んでいたOK氏のことを思うとなんとも忍びない気持ちになったのだが、仕方がない。
そしてさらに、獣医師は血液検査の紙を机の上に広げて私にもうひとつの告知をした。OK氏の白血球の数値が高いというのだ。
これについてはまた後日別の記事で書かせていただくことにするが、この日私はダブルでかなり打ちひしがれた。
その後、もっと!もっと!と遊びたがるOK氏の限界を見極めながら、可能な限り遊ぶようにして毎日を過ごした。ときには限界を見誤ってOK氏が開口呼吸をするまで遊んでしまったこともあったが、こちらも加減がわかってきたこともあり、しだいにOK氏が開口呼吸をすることはなくなっていった。
心なしか成長とともにOK氏の限界値も上がっていく感じに見え、こちらが上限を見極めようと遊んでいる間にOK氏はみるみる筋肉を付けて、体力自慢のマッチョ野郎となっていった。いまや開口呼吸はどこへやら、何回ハイジャンプを繰り返してもへたばらない猫へと成長したのであった。
このように、大興奮で遊んでも開口呼吸をしなくなったOK氏ではあるが、健常な心肺を持つ猫と同じ状態になったわけでは決してなく、そこはやはり飼い主として常に気を配らないといけない状況であることには変わりない。
私が思うに、OK氏は遊ぶときの呼吸法を自分で覚えたのだと思う。どうすれば苦しくならないか、ジャンプ前の呼吸のタイミングを調整したり、着地している間に呼吸を整えている瞬間があったり、OK氏なりに工夫してそれを身に着けたように見える。
獣医師の言うとおり、生まれ持った心肺機能は変わらないのだと思う。OK氏は今でも深呼吸をすることが多い。息を大きく吸い込んで、鼻からふーっと溜息のように吐く。それを1日に何回もする。常に呼吸が浅く、酸素が不足しているからだろう。OK氏が深呼吸する姿を見るたびに、その深い音が聞こえるたびに、決して気を抜いてはいけないのだと胸に刻むのであった。
もうひとつ、猫は熱中症になっても開口呼吸をする。OK氏も動物病院まで歩いて10分ほどの間に軽い熱中症になって開口呼吸をしたことがある。移動用リュックの内側底面とサイドポケットに、凍った保冷剤を薄い布で包んだものを入れていたのにもかかわらず、である。東京の夏は湿度も高くて恐ろしく暑い。この時は幸い、冷房の効いた動物病院の待合室で少し経つと治まったが、夏の暑さを人間の感覚で考えてはならないのだなと肝に銘じた。
猫は全身に毛皮をまとっているのだから、こちらが想像する以上に熱がこもるのだろうなと思う。いくら夏毛に生え変わるとはいえ、自分が夏に足首まである薄い長袖の毛皮を着て外に出ることを想像すれば、熱中症に陥ることは容易に予測できる。
冷房の効いた車で通院する場合は問題ないと思うが、徒歩や自転車で通院する場合は当日の日差しの強さや気温・湿度をじゅうぶん考慮して通院の時間帯を決めるのが良いかと思う。保冷剤はキンキンに凍っているため直接猫に当たらないように移動用ペットキャリーに配置して、緊急用(直接猫に当てて冷やす)には丈夫な氷のうを用意して、やわらかい薄手のガーゼハンカチなどでくるんでおくとさらに安心。
もし猫が口を開けて呼吸をしていたら、すぐに病院に連れて行くべきである。原因を調べてみて、それが一時的なものだとしたらほっと安心できるし、もしも疾患が見つかったとしても、できるだけ早期に治療を開始できるのだ。
わが家のOK氏の場合だと、おそらく生まれつき心肺機能が低いということだったが、運動レベルを上げながら、そして時には下げながら徐々に徐々に適応していくことで健常な猫と遜色なく運動できるようになったのだ。
猫は現代では完全室内飼育が推奨されている。なので、家から出て病院に行くことを嫌がる猫は多いと思う(わが家のOK氏もものすごく嫌がる)。猫が怯えることを考えると、病院に行くことをためらってしまう飼い主さんの心情はとてもよくわかるし、ちょっとした異変を感じるたびに毎回急いですぐに病院に行く必要も無いとは思う。
しかしながら猫の開口呼吸については、上記の経験から迅速に受診することを薦める次第です。