猫の特発性膀胱炎・闘病記録

カテゴリ:猫の病気
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わが家のOK氏は、特発性膀胱炎になって壮絶な数日間を送ったことがあります。
今回の記事は、発症から完治までの詳細な闘病記です。

 猫にとって、おしっこのトラブルほど発生しやすく、また危険なものはありません。猫のおしっこは凝縮されているため、長時間排尿が無いと毒素が体に回って危険な状態になってしまうそうです。

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頻尿の徴候があったので病院へ

 猫のOK氏がわが家に来て1年ちょっと経ったときのこと・・・それまで1日1~2回ほどまとまった量のおしっこをしていたものが、ある日から少量のおしっこを数回に分けてするようになった。
 それでも最初のうちは1日4回程度だったので、まあ標準の範囲内かと思って様子をみていたのだが、あまりにも1度にする尿量が少ない(普段の10~20%量)ので病院で診てもらうことにした。尿量が少なくなり始めてから1週間後のことだった。

カテーテル採尿と反省

 病院に行って症状を話すと、少し触診をした後に、超音波検査をすることになった。
 すると、膀胱が炎症を起こしていることと膀胱内に溜まったおしっこが濁っていることがわかった。この濁りが細菌性によるものか否かを調べるために、尿検査をする必要があるとのこと。もし細菌性のものだとしたら、すぐに抗生物質を投薬して治療しなければならないとのこと。

 しかし当時わが家の猫トイレは固まる砂オンリーだったので、トイレ終了後に尿の採取ができない。ただでさえ神経質なOK氏がさらに神経質になるトイレ時に近づいて採尿するということも、とうていやり遂げる自信が私にはなかった。
 それを獣医師に言うと、カテーテルでの採尿もできるとのことで、そのときの私はそれが一番確実だろうなと思い、カテーテルで採尿してもらうことにした。

 しかし、このことについて私は今でも後悔している。カテーテル採尿をしたことを後悔しているわけではなく、この時点で採尿のための選択肢が「カテーテル採尿に頼る」ことしかなかったことについて、その状況を自分で作ってしまっていたことに対して後悔している。
 もっと早くにシステムトイレ(おしっことうんこを分けて処理するトイレ)を導入していれば、OK氏に負担をかけずに採尿できる選択肢というものがあったのだ。

 カテーテル採尿の処置を目の前で見ていたが、思い出しても申し訳なくて涙が出るほど悲痛なものだった。
 動物にとって急所とされている部分に管を挿されるのである。人間ならその目的を理解して納得・我慢ができるだろうが、OK氏の場合は、わけもわからない状態でそんなことをされるのである。しかもすごく痛い。
 最初は「がんばろうね」「もうちょっとだからね」などとOK氏に声をかけていた私だったが、あまりにも悲痛な声を出すOK氏に対して途中からかける声を失ってしまい「うー・・・」という情けない声しか出なかった。
  OK氏は私を見つめて、聞いたこともないような声で叫んでいた。痛くて怖くて助けてほしかったんだと思う。
  私は後半はもう「早く終わってくれ」と「ごめんね」を念仏のように頭の中で唱えていただけだった。処置はたぶん1分か2分だったと思うが、体感時間は恐ろしく長かった。

 採尿を終えて心身喪失状態になったOK氏は移動用リュックの中で小さく震えていた。ただでさえ何らかのトラウマをかかえてるっぽいOK氏に、また新たなトラウマを植え付けてしまったのではないかと、重ねて申し訳ない気持ちになる。
 「もうしないからね。怖かったね。ごめんね」と震えるOK氏に語りかけながら検査結果を待った。

特発性膀胱炎という診断

 そして結果はというと、細菌は検出されなかったとのことで、特発性膀胱炎との診断を受けた。特発性膀胱炎とは、猫がなる膀胱炎のうち原因がはっきりと判明しないものを言い、だいたいはストレスなどが原因じゃないか、といわれているそう。

 膀胱内の濁りは脂肪と精子(OK氏は去勢してない)によるものではないか、とのことだった。この特発性膀胱炎に治療薬は無いそうだが、膀胱の壁が炎症で厚くなっているので、炎症を抑えるためのステロイド注射を打ってもらってその日は終了した。

 とりあえず細菌性では無いことにひと安心したが、しかしこのときはまだ序章に過ぎなかったのである・・・。この数日後、怒涛の勢いで猫の膀胱炎の恐ろしさを体験することになるのであった。

 ところで・・・今回の記事を書くにあたり「この日」「次の日」という記載では経過がわかりづらいので、膀胱炎で最初に病院へ行った日を「1日目」として、以降は「2日目」「3日目」と記載することにします。
 そしてこれ以降は、今現在膀胱炎を患っている猫と暮らしている方や、病気についての心構えをしておきたいという方々に、症状の経過の詳細な一例として参考としてもらう目的で書くので、上に該当しない方々にとってはあまり関心を惹かない内容になるかと思われます。

 もう少しざっくりとした経過が知りたい方は、記事の最後の方におおまかな経過がわかるグラフがありますので、そちらをご覧ください。

 なお診療費については、同じ処置の場合でも動物病院によって診療費の設定は異なります。記事内に記載してある診療費については目安程度にご参考ください。

1日目の診療
病名:膀胱炎
  • 再診料 500円
  • 尿検査(試験紙・沈査染色顕微鏡) 2500円
  • 超音波検査 2000円
  • 皮下筋肉注射2本 1600円
  • 導尿 1500円
小計 8748円
頻尿悪化で血液検査も受ける

 1日目の夜には普通の量のおしっこをした。もう大丈夫かと思って少しほっとしたのだが、2日目の朝にはまた立て続け(約20分の間)に少量のおしっこを3回した。
 これは変だと思ってすぐに病院へ行き、今度は血液検査をすることになった。超音波検査もしたが、少し壁の厚みが薄くなったね~という感じであった。

 血液検査の結果、謎の体質による白血球数値異常以外には問題は無く、今回の膀胱炎は腎臓の異常によるものでは無いということがわかった。

 とりあえず尿に細菌はいないし腎臓も問題なさそうだし、昨日打ったステロイドの効果はあったようなので様子を見ることになった。
 そして膀胱内の濁りがおそらく脂肪によるものということで療法食を薦められた。そこでお試しにということで、ヒルズのプリスクリプションダイエットシリーズ の、「メタボリックス」 「尿ケア」 のサンプルをいただいた。

2日目の診療
病名:膀胱炎
  • 再診料 500円
  • 採血料 500円
  • CBC 血液血球検査(8項目) 2500円
  • 血液検査1項目500円×10 5000円
  • 血液電解質検査 1500円
小計 10800円
食事内容とトイレを変更する

 2日目は病院から帰宅してから、おしっこが出るようにとOK氏にスープ(いなばの「CIAOボーノスープ」を湯冷ましで薄めたもの)をあげるとすぐ完食。食欲があるのは救いである。
 そしてOK氏の飼い主ズ(私とB技師)は急いでペットショップへGO。新しいトイレと、病院でもらったサンプルと同じ療法食をしこたま買いに行ったのである。

 さっそく2日目の夜ごはんから療法食を開始。まずは少しだけいつものカリカリに混ぜて出すと、OK氏はすぐにペロリと平らげた。味は嫌いではないようでひと安心。結局この2日目の夜は夜に小さいおしっこをしただけだった。

 ここで補足なのですが、いなばの「CIAO ボーノスープ」は現在終売になってしまったようです・・・。このスープにはとてもお世話になったので残念ですが、いなばのホームページを見ると、現在は後継と呼べる商品「CIAO だしスープ」 の「4連パックシリーズ」というものが販売されているようです。

 いなばからは他にもスープが発売されているようですが、「ボーノスープ」と同じような具のないスープは、上記の4連パックになっているものだけのようです。

 この具のないスープというのが、食欲の無い時期の水分補給にとても最適なのですが、ボーノスープの場合はそのままの状態で塩分濃度を計測すると、数値がそこそこ高かった(0.7%)ので、私はボーノスープ1本(17g)にお湯23gを足していました。
 これだと全体量が40gで塩分濃度が0.3%になったので、こちらとしては安心なのですが、全体の風味も薄まるせいか猫の食いつきはまあまあでした。
 そこで、ボーノスープ1本(17g)にお湯を13g足して全体を30gにしてみると、塩分濃度は0.5%で食いつきは良かったので、猫の食欲の程度に応じてスープの薄め具合を変えていました。

 ここ最近のOK氏は水分補給が必要なほど食欲が落ちたり病気をしたりしなくなったため、スープを出す機会が無いのですが、ボーノスープが終売になってしまった今、「だしスープの4連パック」を一度味見がてら買って試してみようと思います。
 試した際には塩分濃度や食いつきなどのレビューを記事にしたいと思います~。

 3日目は頻尿が治まったかのようにみえた。
 おしっこ回数は3回。食欲はあるし、うんこも大量に出たので、ひと安心したことを覚えている。

 そして4日目、雲行きが怪しくなってきた。
 朝から立て続けに3回おしっこをするも、それから日中はおしっこをしなかったので大丈夫かと思って様子をみていたら、夜にまた3回おしっこをした。
 というわけで4日目のおしっこ回数は全部で6回。食欲は変わらずあり、快便。

怒涛の4日間(1日目)・血尿が出た

 そしてとうとうやってきた5日目。ここから怒涛の4日間が始まる・・・。

 朝8:30におしっこをしたが、このときは異常なし。そして10:30におしっこをしたその直後に異変が起きた。
 今までトイレに入れば、どんなに少量でもおしっこをしていたのだが、10:30のおしっこの直後に再びトイレに入ってきばった際に何も出なかった。
 これはおかしいな・・・と思っていた矢先にまた再度トイレに入ってきばる。そしてトイレを見ると、血が出ていた。青い猫砂の上でもよくわかるほど濃い真っ赤な血であった。

 それを見てテンパる私。病院、病院に行かなくては!ということで高速で着替えて、OK氏を病院に連れていった。私が着替えをしている間にも数回トイレに出たり入ったり、何も出なかったり血尿が出たりしていた。血尿というよりは鮮血と言えるほど血の濃度が濃いものが少量(数滴)出ていた。

 病院では獣医師も不思議そうに診察していた。前回の診療では、今後治ることはあっても悪化する心配は無いような状態だったそうだ。しかしここにきての急性悪化である。
 今度はステロイドと鎮痛剤と水分補給の点滴を打ってもらい、「今回の点滴でさすがに症状が改善してくると思うので、明日から1日1回3日間飲み薬を服用してください。」とのことで、3回分のステロイドの飲み薬と止血剤の飲み薬も処方してもらった。特効薬が無い以上、対処療法に過ぎないとしてもやれることをやるしかない。

5日目の診療
病名:膀胱炎
  • 再診料 500円
  • 皮下点滴 2000円
  • 皮下筋肉注射2本 1600円
  • トラネキサム酸250mg90円×3 270円
  • プレドニゾロン錠100円×3 300円
小計 5043円

 5日目は、病院からの帰宅時に移動用リュックの中で数回血尿をして、帰宅してから12:30に少量の血尿をしてから夜中までおしっこをしなかった。ステロイドでも止血剤でもなんでも良いからとにかく効いてくれることを願い、5日目の夜は私は看病を兼ねてOK氏の部屋で寝ることにした。
 お昼からおしっこが出ないことを心配していたのだが、たぶん鎮痛剤の注射が効いていたためだろうと思った。23時頃に一度寝付いて、5日目が過ぎていった。

 今回の記事では、尿を「通常の尿、薄血尿、血尿、濃血尿、血混尿」の5つのパターンに分けて説明しています。
 「青い猫砂」と「吸水面が白いシート」における各パターンごとの尿の色を、下のイラストに描いてみましたので、記事を読む際にご参考ください。

尿の分類と色
怒涛の4日間(2日目)・トイレラッシュ

 6日目が始まって少し経ったころ、夜中の1時45分にOK氏が猫砂を掻く音で私は目が覚めた。トイレが済んだようなので見てみると、大きな血尿のおしっこの塊があった。血が混ざってはいるが、ようやく普通の量の尿が出たことに安心していたところ、その20分後にまたOK氏がトイレへと向かった。少量の血尿がそこにはあった。

 その後も5分~10分おきにOK氏は数滴の血尿を出しにトイレへと向かい続けた。それが朝の7時過ぎまで続き、夜間のトイレ回数は23回にも及んだ。その後OK氏はうとうとと眠りにつき、そこから3時間ほどはトイレに行かずに睡眠を取ることができた。

 10時過ぎにOK氏が目覚めて、すぐにトイレへ。普通の量のおしっこをするが、スコップで取ったおしっこ玉の見た目はまるで血のカタマリのようであった。その後は夜中と同じように3分~10分おきくらいの頻度にトイレに行き、数滴の血尿を出していた。

 昨日の獣医師の話では、昨日打った点滴で症状は改善するはず・・・とのことだったが、改善の気配は無くむしろ悪化している感じだったので、改善したら今日から飲むようにと処方された内服薬は飲ませずに動物病院に行った。
 獣医師は「昨日の点滴で改善すると思ったんですが・・・」と首をかしげていたが、症状が悪化しているのでまた昨日と同様にステロイドと鎮痛剤と水分補給の点滴を打ってもらった。

 さらに獣医師から「あくまでもサプリメントだけども膀胱炎に効果があるとされているものがあるので出しますか?」と尋ねられた。「サプリメントなので薬のように効くわけではないんですが」と念を押されたが、その時はもう藁にでもすがりたい気持ちなので2つ返事でお願いした。
 たとえおまじない程度のものでも無いよりは良かった。目の前であんなに苦しんでいる猫が居るのに何もなす術が無いことに耐えられなくて、何かをしたかった。

 このサプリは少し独特なにおいがあるため、猫によっては嫌がる可能性があるとのことでひとまず当日分だけいただくことにした。1日2回、朝晩に1錠ずつ飲ませるように、とのこと。「ウロアクト」というサプリメントだった。

 上記の「ウロアクト」は、現在は「ウロアクト プラス」という製品になったようで、有効成分はあまり変わっていないようですが、その他の含有成分が少し変更されているので、気になる方は下記のアドレスにアクセスして成分を確認してみてください。

『獣医医療開発株式会社「ウロアクト プラス」製品ページ』
URL(http://www.vmdp.jp/products/uroact/uroact.html)

※上記のサイトはSSL通信(https)に対応していないようなので、誤ってアクセスすることが無いよう、リンクではなくURLを記載させていただくのみとしました。

6日目の診療
病名:膀胱炎
  • 再診料 500円
  • 皮下点滴 2000円
  • 皮下筋肉注射2本 1600円
  • ウロアクト1錠70円×2 140円
小計 4579円

 病院から帰るとすぐにOK氏はトイレに向かい、また数滴の血尿をした。その後は割と落ち着いていて、1~2時間おきにトイレに行く程度だった。尿も、均一にに血と尿が混ざった血尿ではなく、尿の一部分に血が滲んでいるような状態になってきた。
 昨日もそうだったが、病院から帰った後は鎮痛剤のおかげで割と症状が落ち着いている。だがやはり薬の効果が切れてくると、症状はまたひどくなる。

 サプリメントの「ウロアクト」は、粉状に砕いてボーノスープに混ぜて飲んでもらった。少々香ばしいにおいのある錠剤(※カマボコ風味とのこと)なので、ひょっとしたら飲まないかも・・・と思ったが、多少の違和感は感じながらもボーノスープの美味しさが勝ったようで、残さずちゃんと飲んでくれた。(※薬の砕き方は、前回の記事「猫白血球の数値が高い-薬の砕き方の記載箇所-」をご参考ください。該当の箇所がオレンジの2重線枠で囲まれて表示されます)

症状の悪化や改善によって血尿の状態に変化が表れてきたため、これ以降、血と尿が均一に混ざり合わさったものは「血尿」、尿の一部分に血が混じったものを「血混尿」と分けて記述することにします。

怒涛の4日間(3日目)・頻尿と血尿のピーク

 午前0時を回って7日目を迎え、すぐにOK氏は寝付いた。どうかこのまま朝まで穏やかに眠ってくれますようにと願ったものの、結果的にこの7日目が今回の膀胱炎において一番症状がひどかった日になった。

 昨日と同じく1時半頃にOK氏は目覚め、トイレで少量の血混尿をして、その後は1時間おきくらいに少量の血混尿をした。
 数滴の血尿ではなく、たとえ少なくても「少量」と呼べる程度の量のおしっこをしてくれることに安堵していたのだが、4時前後の5分間ほどで4度トイレに行き数滴の鮮血と血尿をし始めたため、やはりまだまだ治るには遠いのだなと思った。

 しかしその後、OK氏はちょうど2時間睡眠を取ることができた。痛いしトイレできばりっぱなしだし毎日病院に行くしでOK氏は相当疲れているはずなので、少しでも眠ってくれるとそれだけで救われた。

 しかしその短い眠りから目覚めるとOK氏は未だかつてない勢いでトイレに行き始めた。6時台は合計18回、1~3分に1度トイレに行き数滴の鮮血と血尿をした。
 そのペースで7時7分に血尿をすると、その後は3時間ほど眠り、目覚めてからはやはり1~4分ほどのペースでトイレに行った。この時出るのは数滴の鮮血ばかりであった。

 11時すぎに病院に行き、昨日と同じ処置をしてもらう。獣医師がOK氏の頭を指で撫でて「君は治りが遅いねぇ~。どうしてかなぁ~・・・。」と困ったように微笑んだ。人に触れられるのが大嫌いなOK氏は「やんのかコラ」みたいな臨戦ポーズをとったが(先生スマン)、移動用リュックを見つけたとたん光速でリュックの中へジャンプして入った。
 たくさんの動物を診てきた獣医師でもなぜ治らないのかわからないのだ。私になんてわかるはずもないのだから目の前にある自分にやれることだけをしっかりやるしかない、と思った。

 OK氏に食欲があって、少しだとしても睡眠をとれていること、そして気にくわないことがあれば臨戦ポーズを取れるくらいの気力があることに安堵と感謝をした。

7日目の診療
病名:膀胱炎
  • 再診料 500円
  • 皮下点滴 2000円
  • 皮下筋肉注射2本 1600円
  • ウロアクト1錠70円×2 140円
小計 4579円

 ところで、血尿が出た日からOK氏はトイレではない場所でおしっこをすることが増えたため、この頃のわが家はいろんな場所にペットシーツを敷いている状態であった。吸収面が白いペットシーツを使っていたので、私が見ていない場所でおしっこをした場合にも早く気が付けるし、肌ざわりも布っぽいので弱っているOK氏には砂よりも心地よいのかもしれなかった。とにかくおしっこが出せるのならいつでもどこでも出してもらえるように環境を整えた。
 膀胱炎になる前から、わが家ではOK氏がいつでも入れるように硬質プラスチック製のペットキャリーを常に置いていたのだが、普段はあまりその中に入らないOK氏が、この時期はその中に入って度々おしっこをしていた。病気になるとやはり猫の心理は普段と同じでは無いのだなあ、と感じた。

 7日目は、病院から帰宅して数時間OK氏はおしっこをしなかったのだが、夕方前になってリビングに置いてある竹製のかごの中でおしっこをした。血尿でもない血混尿でもないように見える正常に近い黄色で、しかも普通の量だったので、いよいよ治ってきたのかと少し希望を持った。・・・矢先の3分後にごく少量のおしっこをトイレでしたので、やはりまだまだ頻尿は収まっておらず、気を緩めてはいかんのだと思いなおした。
 その後、16時半に10滴ほどの薄い血尿を、19時半に小サイズのおしっこをした。それからは1時間に1回ペースでごく少量の血尿と血混尿をして、日付が回って8日目の午前2時頃にやっと寝付いてくれた。

怒涛の4日間(4日目)・夜までは相変わらずの状態が続く

 しかし、その2時間半後に目覚めたOK氏は、まだまだ悪夢の続きのようにトイレの出入りを繰り返した。その回数は、4時半~6時過ぎまでの間に32回。少し落ち着いたのか疲れのせいか、その後は10時まで眠ってくれた。
 再び目覚めてから病院に行くまでの1時間で、トイレ回数は5回。うち1回はきばっても何も出ず、あと4回はごく少量の血尿である。
 8日目も、病院でまた同じ処置をしてもらう。学習能力が高いOK氏、点滴も慣れたものである。帰宅するとリュックのなかにおしっこをしていた。血は混ざってなさそうな色で少し安心。

8日目の診療
病名:膀胱炎
  • 再診料 500円
  • 皮下点滴 2000円
  • 皮下筋肉注射2本 1600円
  • ウロアクト1錠70円×2 140円
小計 4579円

 帰宅後は15時すぎに少量のおしっこ。19時には大きめサイズのおしっこをした。血は混ざっていないっぽい色。しかし安心は禁物、鎮痛剤の効き目が切れて、辛い夜がまたやってくるのだと心の中でハチマキを結びなおす。

 が、しかしである。嬉しい誤算とはこのこと、連日続いている辛い夜はこの日ついに来なかったのである!
 21時に普通の量のおしっこを、そして23時半に中サイズのおしっこをしたOK氏はその後すやすやと眠りにつき、日付が回って9日目の3時まで睡眠を取ることができたのだ。3時に目覚めてからはトイレで普通の量のおしっこをして少し眠り、その3時間後の6時にはまた普通の量のおしっこをした。

急回復!

 これは驚くべき変化である。昨日まであれだけ夜中に小刻みに行っていたトイレ・・・、何も出ないのにきばって血圧上がらないか、脳の血管切れないだろうかという心配もあった。それが急に無くなったのである。OK氏の体内で何が起こったのかはわからないが、今回ばかりは本当に治ってきたのかもしれない。

 9時前にはまた普通の量のおしっこをして、私は喜び勇んで今日も病院へと向かった。急回復したことを獣医師に告げると驚いていたが、超音波検査をした獣医師が「ほうほう」とつぶやき「ほんとに回復してますねえ」と言った。嬉しそうである。まだ完全には治っていないが、この調子でいけばもうすぐに治るでしょうとのこと。
 5日目に処方されたものの服用していない薬3日分が家にあるので、明日から2日間だけその薬を服用するように言われた。そして念には念をということでその日も点滴をしてもらい、とりあえず毎日通院はしなくても良いということになったのでウロアクトを1週間分いただいて帰った。

9日目の診療
病名:膀胱炎
  • 再診料 500円
  • 皮下点滴 2000円
  • 皮下筋肉注射2本 1600円
  • ウロアクト1錠70円×14 1058円
小計 5486円

 やっと戦いが終わるのか・・・OK氏は本当に辛かったと思う。実はまだ完治するまでには少々時間がかかるのだが、急性症状はいったんこの日で治まった。

 点滴で水分補給していることと、ウロアクトを溶かしたスープ(40g)を1日2回飲んでいることで、おしっこの量も回数も平常時よりは多くなっているが、膀胱炎初期の「少量のおしっこで頻尿」というのは無くなった。

 9日目はおしっこ回数は合計6回、中サイズと普通の量で、血尿はなし。
 10日目もおしっこ回数は合計6回、夜中~朝方にかけて3回中サイズのおしっこをしたのは気になるが、とりあえず様子見。

食欲が落ちてきた

 そして11日目、夜中~朝方にかけておしっこをしなかった!きっと熟睡できたことだろう、よかったよかった。
 ここにきて食欲が少し落ちてきたのでちょっと心配。そして1日中寝ている。闘病の疲れが出たのだろうか。
 11日目のおしっこ回数は合計6回、どれも小~中サイズのおしっこ。

 12日目、今日も夜中~朝方にかけておしっこをしていない。深夜のおしっこ問題は解決したといって良いだろう。
 しかし今日も食欲がなく、カリカリはお皿からはあまり食べないので、手に乗せて顔の前に差し出すと少し食べた。それでも完食はできず・・・。
 今日も1日中眠っていたが、夜になって「にゃー」と大きめの声で鳴いてみたり、少し元気になった様子。

 13日目、今日も食欲があまり無く、OK氏は自分の部屋に設置してあるお気に入りのハンモックの上で眠ってばかりいた。あまりにもリビングに降りてこないので夕方心配になって見にいくと、私の気配で目を覚まして機嫌よくゴロゴロ仰向けになった。機嫌も良いし、夜はおもちゃでよく遊んだので、気分が悪いわけでは無さそう。
 13日目はおしっこ回数は合計6回でどれも小~中サイズ。

 14日目、食欲が落ちているのでスープを人肌の温度になるように調整して出してみると、すぐにペロリと平らげた。夏まっさかりの時期だったが、やはり体調が悪いときは少し温かいほうが良いのかもしれない。

 おしっこ回数は合計5回で、ほぼ全部小サイズ。夜には、普段は見向きもしないクッションのような猫ベッドに珍しく乗ったかと思ったら、そこでおしっこをした。1回のおしっこ量も少なくなってきているしこれは何か良くない感じがする、ということで次の日は病院に行くことにした。

また頻尿、膀胱には脂肪球

 15日目の朝、30分の間に少量のおしっこを2回する。やはり調子が良くない。
 病院で超音波検査をしてもらうと、何やら膀胱内に白く見えるでっかいものがあった。「脂肪球ですね」と獣医師。

 どうやら脂肪のカタマリが膀胱内に出来てしまって、溜められるおしっこの容量が少なくなっているとのこと。自然に排出されることもあれば、手術で摘出しなければならないこともあるそうで、私はとりあえず自然排出を目指すことにした。

 「どのくらいの期間で自然排出されるかはハッキリ言えないけど、時間はかかるかもしれません。」とのこと。とにかく体重管理と、脂肪の少ない食事を心がけることが重要とのこと。

15日目の診療
病名:膀胱炎
  • 再診料 500円
  • 皮下点滴 2000円
  • 皮下筋肉注射1本 1200円
  • ウロアクト1錠70円×14 1058円
小計 5054円
脂肪の少ない食事

 1日目に病院で「メタボリックス」と「尿ケア」のドライフードを薦められてからは、それを食事に出していたのだが、この日(15日目)の病院での結果を受けて、OK氏のごはんをより脂肪分の少ないダイエットメニューに切り替えた。

 ウロアクトを混ぜたスープを1日2回。そして療法食のヒルズの「c/dマルチケア コンフォート+メタボリックス」(脂質13.4%)と普通食(総合栄養食)の「セレクトバランス・スリム」(脂質9.5%)を混ぜたもの。さらに、膀胱炎になるまで主食にしていたロイヤルカナンの「ブリティッシュショートヘア用」(脂質17%)を3gだけ混ぜて出すことにした。

 これは飼い主ズのB技師(OK氏はなついていない)の提案であった。脂肪の少ない味気ない食事ばかりではあんまりなので日々の食事に楽しみを・・・とのこと。そして、ブリティッシュショートヘアのOK氏にとって必要な強いアゴを少しでもキープできるようにという思いを込めてのことだった。

 この考えは、少しの脂肪分も排除しようとしていた完璧主義である私には無い発想で、「治さなきゃ、治さなきゃ」と張り詰めていた私の緊張の糸をも少し緩めた。どんな時もクオリティオブライフを忘れないようにしなくては・・・と自分に言い聞かせる。

 ヒルズのプリスクリプションダイエットシリーズでは、現在「メタボリックス」関連のドライフードが2種類販売されています。
 ①「メタボリックス」 は純粋にダイエット用で価格が500g 1639円、②「c/dマルチケア コンフォート+メタボリックス」 は、「メタボリックス」に「尿ケア」と「ストレスケア」をプラスしたもので価格は500g 2048円です。
 わが家のOK氏はストレスも感じやすいし、膀胱炎にもなってしまったし、脂肪分の少ない食事にしなければならないし、ということで2番目の「c/dマルチケア コンフォート+メタボリックス」が求めていた条件にピッタリはまりました。

 ※療法食は病気、疾患、体質などに対応して調整された食事です。症状が同じでも原因が違う場合もあり、自己判断で使用してしまうと体調が悪化してしまう恐れもあります。
 療法食はペットショップなどでも販売されていますが、使用する前にまずは必ずかかりつけの獣医師に相談するようにしてくださいね。

 ベッツチョイスジャパンが輸入販売する「セレクトバランス スリム」 は療法食ではなく通常の総合栄養食ですが、とにかく脂肪分が少ないところがメリットなので購入しました。
 粒が非常に小粒(横長のハート型)なのですが、OK氏はそれがとても気に入ったようです。OK氏はたま~に食べ物を噛むのが面倒くさくなる時期があるのですが(歯やアゴの疾患ではなく、気持ち的なもののようです)、そんな時期には噛まずに食べられるので、セレクトバランスしか食べなかったりします。
 OK氏が膀胱炎になった頃は、グレインフリーではありませんでしたが、セレクトバランスのWEBサイト を見る限り、現在は猫用の製品はすべてグレインフリーに切り替えているようです。
 ただ、まだグレインフリーではない製品の店舗在庫があったりするので、グレインフリーのものを希望する方は、店頭やネットショップで購入する際に「Grain Free(グレインフリー)」の表記があるか確認してから購入するように注意してください。

頻尿が収まる、食欲も戻る

 この日から5日間(16日目~20日目)は少量のおしっこを1日に4~5回する感じであった。食欲はあまり良くないが少しずつ食事を残す量が減り、なんとか体調は上向きになっているようであった。

 そしてそこからさらに16日間(21日目~36日目)は、同じように1日のおしっこ回数は4~5回だったが、たまに標準の量のおしっこをするようになってきた。ダイエットメニューが意外と気に入ったのか食欲も戻った。

 さらにそこ(37日目)からは、毎日1回は標準の量のおしっこをするようになっていた(たまにしない日もあったが、少量のおしっこしかしない日が連続することはなかった)。おしっこの回数も1日3回程度になっていた。

50日目・膀胱の脂肪球が無くなる!

 そしてそしてついにやってきた、最初に膀胱炎で病院にかかってからちょうど50日目のこと。
 OK氏の爪も伸びてきたことだし、毎月している寄生虫予防薬(レボリューション6%)をもらいがてら病院に行くことにした。そして病院で、その後の経過を見るためにも超音波検査をしてもらったのだが・・・。

 無い・・・無い!OK氏の膀胱からきれいさっぱり脂肪球が無くなっていたのである。

 これには私は大歓喜。そして獣医師は驚き、いったい何を食べさせたのかとドライフードの銘柄を尋ねてきた。喜びのあまり朦朧とする意識の中で思い出せる限りの銘柄は伝えたつもりなので、どうか今後の診療に生かしていただければ幸いである。

 無事に「完治」というお墨付きをもらってうきうきの飼い主ズをよそに、OK氏はぽかんとして早く帰りたそうであった。

超音波検査の再現イメージイラスト
※上の超音波検査の再現画像は私が記憶を頼りに描いたイラストであり、実物ではありません。思いのほかそれっぽく描けてしまったので、誤解が無いように一応注記しておきます~。
50日目の診療
病名:膀胱炎
  • 再診料 500円
  • 超音波検査 1500円
  • レボリューション2000円×2 4000円
  • 爪切り 800円
小計 7244円
50日間の尿の状態グラフ

 以上が、OK氏の突発性膀胱炎の顛末となりますが、かなり長文になりました・・・。というわけで視覚的にわかりやすいように完治までの50日間のおおまかな尿量の推移を表したグラフを下に記載します。

 縦軸はトイレ回数、横軸は日数です。1回のトイレで排泄した尿量別に色分けした積み上げ棒グラフになっており、棒の長さは1日の全トイレ回数となっています。
 赤色が尿量0(トイレに行ってきばったものの出なかった)で最も尿量が少なく、オレンジ→黄色→水色→緑の色の変化に従って尿量が多くなっていくことを表しています。黒い折れ線は血尿の回数です。

グラフ「一度のトイレで排泄した尿量とその回数」
※クリックすると拡大したグラフ画像ページへ移動します

 棒が長く赤色が多いほど症状が重い日ということになるのですが、このような急性症状はわが家の猫の場合は4日ほどで治まったということがわかります。血尿も、急性症状に伴うように出ています。
 しかし、この急性期を過ぎればぐんとトイレ回数が減り、1回の尿量も少しずつ増えて標準量に近い量(水色・緑色)が出るようになっています。

 このようなグラフでデータだけ見てみると、苦しいのは「たった3、4日のこと」と思われるかもしれませんが、先が見えずに大切な猫が苦しみ続けている4日間というのはとても辛いものでした。
 病気の症状には個体差がありますが、一例としてのこのデータが、苦しい渦中に居られる飼い主さんの参考になれば・・・と願います。

 より詳細な食事内容・排尿時間・尿状態の記録はこちらのページにて掲載していますので、特発性膀胱炎の経過の一例としてご参考ください。

あなたの大切な猫さんが、どうか回復しますように

 当時のことを思い出すと、今でも本当に辛い気持ちになる。猫は弱音を吐かないし、ただ黙々とその時その時の自分の身体と向き合うのみなのである。飼い主は動物病院に連れて行く他は、そのように静かに病気と闘っている猫を見守るだけしかできないというのが、なんとも非力を痛感させられる出来事であった。

 インターネットや本でいくら調べても、何時に何回どれくらいのおしっこをしたか、それが何日続くのかといった詳細な情報にたどり着くことはできなかった。それを知ったところでOK氏の状態が良くなるわけではないのだが、私はとにかく5分後10分後のOK氏がどうなるのかが不安で、できることなら同じ病気になった猫がどのような経過を辿ったのか、それを知りたかった。
 OK氏と違う経過をたどってても構わないから、なんらかの共通点を見つけて今後の予測をしたかった。こんなに血尿が出ても死にはしないのか、まだまだ悪化するのか、ここが一番の峠なのか、何日くらいで最悪の時期を脱することができるのか。切実な願いであった。

 だから私は、その時の私と同じような心境の方に向けてこの詳細な記事を書いた。当時の私がこのような記事を読んだら、一字一句に目を凝らして繰り返し読んだに違いないと思う。
 目の前でトイレに出たり入ったりしているOK氏の姿を見るたびに心配で不安で、「トイレから出てすぐにまたトイレに向かう。それを何分間隔で何時まで繰り返す」そういう情報が本当に欲しかった。

 もしあの時の私と同じ状況にあって、今現在この記事を読んでいただいている方がいるとすれば、その方にエールを送りたい。あなたの大切な猫さんが、どうか回復しますように。

(ライター:たてめ)
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