江戸城の中を歩きたい(2)
不定期連載の第2回。江戸城ゲーム制作の進捗状況と、江戸城こぼれ話です。
江戸城を自由に歩きたいという情熱を胸に、現在マイペースにゲーム制作を続けております。たてめでございます。
前回の記事で「文久の頃に残されたとされている図面を参考にしている」「江戸城の2階部分の情報が無い」と書きましたが、この4か月で変化がありました。
まず参考にしていた文久年代の図面はあまりにも情報が少なく、細部が不明な箇所が多かったため、文久の直前である万延年代に残された図面を参考にすることにしました。
そして私の長年の懸念であった江戸城の2階部分についてですが、ななんと資料が見つかりました!できるだけ正確な情報として整理・検証する必要があるので、図面に起こすのにはまだ少し時間がかかりますが、これはとても嬉しい出来事でした。
さて、肝心のゲーム制作の進捗状況ですが、まだマップの土台となる間取りを図面に起こしている最中です。ようやく主要な部分の間取りが完成し、現在は柱の場所を書き込んでいるところ。
ちなみに上記の画像は、有名な「松の廊下」の先にある「白書院」と呼ばれるスペースです。
下記の全体図(右側が北方向)では赤い四角で囲んだ部分になります。
柱を書き込む作業はかなり細かい作業なので、老眼に片足を突っ込んでいる身には厳しいものがありますが、柱の1本1本を書き込むたびに「なぜここには柱がないのか」や「なぜ柱の間隔を変えているのか」などに思いを巡らせるのがまた楽しくもあります。
今はひとまず江戸城を自由に歩くゲームを作ることを目標にしていますが、ゆくゆくは床下の基礎や部屋ごとに趣の異なる天井、煙出しの場所、複雑に組み合わさった御殿同士の屋根なんかも再現したいな・・・と夢を膨らませてみたり。
現実的なこの先の作業としては、柱の書き込みが終わったら、壁・障子・襖・杉戸の配置の書き込み、畳・板敷きの配置、床の間・棚・欄間の配置という順番で図面に書き込んでいく予定です。
まだまだマップの土台作成が続きますが、みなさま気長にお付き合いいただければと思います。
たかが畳、されど畳・・・。
和室といえば畳ですが、江戸城にある大半の部屋も畳が敷き詰めてありました。
一般の住宅においては畳は畳以上の意味を持ちませんが、江戸城においては少し事情が異なっていたようです。
たとえば年始には、将軍は通常「白書院」か「大広間」で大名達の挨拶を受けますが、その大名の「格」によって着座する位置、献上品を置く位置、盃を受ける位置、拝領品を受け取る際に移動する位置などが細かく設定されていました。
その位置を表すのが「畳の位置」で、たとえば「下段下より3畳目」といった感じで決められていたようです。(※下段というのは大広間の下段の間と呼ばれる部屋のことで、大広間には上段の間・中段の間・下段の間という部屋があり、将軍が着座しているのは上段の間です。)
正月2日に挨拶をする時点で将軍からはそこそこ遠い存在なのに、さらに大広間で部屋を隔てて挨拶をする大名の気持ちになると、
将軍と自分との身分的な距離が畳の枚数によって視覚的に表されているような感覚になったことでしょう。
しかししかし、官位によっては盃を受ける時以外は板敷きの入側(縁側と部屋の間にある通路)に着座する大名も居たようですので、下段の畳であっても「畳」に居場所を与えられるだけまだ将軍を近くに感じることが出来たかもしれません。
たかが畳、されど畳・・・。
江戸城内にある通路としての機能を持つ場所は「入側」と「廊下」がありますが、江戸城においてはどちらも畳が敷かれていることが普通です。
有名な「松の廊下」は、一般的な大名が老中に謁席する際に使用されたようですし(もちろん着座する畳の位置も決まっている)、廊下と言いながら応接室として機能している側面もあったことを考えると、畳が敷かれていたのも妙に納得できます。
さてさて、私が江戸城のマップを作っていて今現在一番困っているのは畳のことです。 江戸城の各部屋に敷かれた畳の「向き」や畳の「縁(へり)の色柄」など、資料によって記載が違ったり、資料自体が見つけられていない事柄についてはとても悩ましいです。
江戸城の畳は、主に作事方と呼ばれる建築部門に設けられた「御畳奉行」という役職によって管理されていました。
尾張でこの御畳奉行に就いていた人物の日記なるものが、現在書籍で発売(「元禄御畳奉行の日記」神坂次郎著,中公新書)されていることを知り、城は違えど何か手がかりが無いかと思って購入して読んでみたこともあります。
結果的にこの本には畳の情報は1mmも書いてありませんでしたが、日記の筆者である尾張の御畳奉行・朝日文左衛門の目を通して語られる元禄時代の物事からは古臭い価値観などは感じられず、現代と変わらない人々のささやかな日々の営みが頭に映し出されました。興味の湧いた方はぜひ読んでみてくださいね。
各部屋に敷かれた畳の向きに関しては、現在一部の部屋に関する資料は見つかりましたが、大半の部屋に関する情報は見つけられていない状況です。
しかし、各部屋に使用された畳の縁の情報に関しては、どうやら博物館の一般公開されていない資料にあるようです。今後一般公開されるのかはわかりませんが、ゲーム制作にはまだまだ時間がかかるので気長に待ちたいと思います。
「Zomboid内江戸城再建日記」シリーズ
ゾンビ0の「Project Zomboid」内で、のんびり江戸城を再現します。間取り好きによる趣味の世界です。